会社を存続させるには、売上よりも利益を優先するべきです。
それなのに利益のことを分かっていない営業が多すぎる。
なぜなら売上が上がらなくなると「他社はもっと安い。値段を下げないと売れません」なんて真面目な顔をして言い出すからです。
はっきり言いますが、値段を下げないと物が売れない営業は、仕事をしていないのと同じです。
当たり前の話ですが、営業が利益を無視して売上を追求すると、会社は赤字になります。
会社が赤字になればいつかは倒産し、仕事自体がなくなるのです。
なので営業は受注する前に、利益が出ているかどうかを確認することが大切。
そして利益を考えるために知っておくべきことが「営業利益」と「限界利益」。
このふたつの違いを理解していないと、思わぬ赤字を招くことになります。
ということで、赤字受注でも利益が出る理由と、利益を考えるために大切なり「営業利益」と「限界利益」について紹介します。
赤字受注でも利益が出る理由
赤字受注でも利益が出る理由は簡単。
売値が変動費よりも高いからです。
ちょっと専門的な言葉を使えば、営業利益が赤字でも限界利益が黒字なら、利益を出すことができます。
つまり赤字受注は営業利益が赤字の受注を指します。
ということで次は「営業利益」と「限界利益」の違いを説明します。
営業利益と限界利益の違い
営業利益と限界利益の違いは、売上から固定費を引くか、変動費を引くかの違いです。
営業利益とは
営業利益は企業が本業で稼いだ利益のこと。
計算は次の式を使います。
- 売上高-(売上原価+販売費・一般管理費)=営業利益
売上原価とは商品を仕入れる、または製造するときにかかる費用のことです。
また次の式でも計算できます。
- 売上高-(固定費+変動費)=営業利益
ただ営業利益を1つの商品で計算するのはすごく大変です。
なので限界利益を計算して、商品の販売数を考えていきます。
限界利益とは
限界利益は次の式で計算します。
- 売上高-変動費=限界利益
商品を販売するときの「原価(売上原価+販売費・一般管理費)」は「変動費」と「固定費」にわけることができます。
- 固定費:生産量、販売量に関係なく常に一定の金額
- 変動費:生産量、販売量に比例して増えていく費用
ちなみに変動費は個人で計算しようとしてもまず不可能。
かなり専門的な知識が必要になるので、知りたければ経理に聞いてください。
限界利益が固定費を超えれば黒字になる
次の商品を販売するケースで考えてみます。
- 売値:300円/個
- 限界利益:100円/個
- 固定費:500円/個
この商品を1つだけ販売すると、400円の赤字になります。
限界利益100円-固定費500円=-400円
5個販売すると、限界利益と固定費が同額になるので、利益は0円です。
6個販売すると、限界利益が固定費を超えるため、100円の利益を得ることができます。
限界利益600円-固定費500円=100円
つまり限界利益が固定費を越えれば黒字になるのです。
なぜなら限界利益ー固定費は、売上高ー変動費ー固定費だから。
ピンときた方もいると思いますが、実は限界利益ー固定費=営業利益です。
営業が見るべきなのは「限界利益」
会社を赤字にしないために、営業が見るべきなのは「限界利益」です。
固定費は毎月一定の金額がかかるため、製品1つ当たりに落とし込むことが難しくなります。
また受注量が少ない時に、営業利益で受注可否を判断すると、ほとんどの商品が受注できません。
それに利益を出すにはトータルで黒字になるよう受注していくことが大切。
そのために「限界利益」で受注可否を判断し、販売数を増やすことで黒字になるようにします。
つまり商品を単品で見たときに「営業利益」が赤字でも、「限界利益」が出ているのなら受注していいのです。
限界利益が赤字の商品は絶対に受注しない
限界利益は大雑把であれば簡単に確認することができます。
- 売値-仕入れ値=限界利益
- 売値-原材料費=限界利益
この程度の計算でも、受注可否を判断する材料としては十分です。
もし上記簡易計算で赤字になるのなら、その商品は絶対に受注してはいけません。
限界利益が赤字の商品は、売れば売るほど赤字になってしまうからです。
赤字で販売する営業の言い訳
赤字で商品を販売する営業の言い訳は、だいたい決まっています。
- その価格でしか受注できなかった
- 値下げ要請に応えたらその金額になった
- 売上確保を最優先にした
- 競合はもっと安い
また売れない営業に限って「値段を下げないと売れない」と言い出します。
何度も同じことを言いますが、限界利益が赤字の商品は、売れば売るほど会社全体が赤字になります。
赤字の商品を販売し続ければ、倒産する可能性さえあるのです。
なのでどんな理由があろうとも、限界利益が赤字の商品を受注してはいけません。
自分の営業力の無さを棚に上げて、赤字で商品を販売するなんてもってのほか。
営業は売上よりも「利益」確保を優先するべきです。
利益をどう確保するか
利益を増やすには次の2つしか方法がありません。
- 高く売る
- 安く仕入れる(作る)
つまり「売値を上げる」か「原価を下げる」しかないのです。
ですが「売値を上げる」のも「原価を下げる」のも、簡単にはできません。
とくに「売値を上げる」には客先の了承を得る必要があり、かなりハードルが高くなります。
売値を上げるには
売値を上げるために必要なのは「付加価値を付ける」ことです。
よく言われるのが「商品に物語を設定する」ことですね。
たとえば乾電池。
使用できる時間や耐久性が他社と変わりなければ、価格競争に巻き込まれます。
ですが他社よりも長持ちするのなら、その分高く売ることが可能です。
ダイヤモンドや金のように「希少性」も付加価値になります。
製作している方が「人間国宝」なら、それだけで高く売ることができるでしょう。
「小林さんが10年の年月をかけて開発した、どこよりも甘い柿」
こういった「商品の物語」も付加価値になります。
商品の付加価値を考えることも、営業の大切な仕事です。
原価を下げるには
原価を下げるには、材料を今より安く仕入れるか、生産性を上げるしかありません。
生産性を上げるには、工程のボトルネックを探し出し、改善していく必要があります。
材料を安く仕入れるには、仕入れ先の協力が不可欠です。
以前利益率20%の商品を50%まで改善したときは、仕入れ先の開拓を行いました。
この時探した仕入れ先の条件は「新しいことにチャレンジしたい」と考えていて「協力的」であることです。
そのため仕入れたい商品を扱っているかは考えず、協力してくれるかどうかを基準にして探しました。
もちろん「協力的な会社」を見つけても、すぐに必要な商品は仕入れられません。
なのでお互いに協力しあい、1年かけて取引の基盤を作ったのです。
その甲斐があって、1年後には原価率を30%も下げることに成功しています。
原価を下げるには「工場に依頼する」「下請けに依頼する」ことだけを考えがちです。
ですが営業であれば、自ら仕入れ先を開拓して育てることができます。
つまり原価低減も、「営業の仕事」だと言えるのです。
最後に
営業は売上よりも利益を優先するべき。
そして考えるべき利益は「限界利益」です。
限界利益は次の式で、だいたいの金額を把握することができます。
- 売値-仕入れ値=限界利益
- 売値-原材料費=限界利益
限界利益が赤字になる商品は、どんな理由があっても販売するべきではありません。
売れば売るほど赤字になりますから、下手をすると会社が倒産します。
利益を確保するために、営業は次の2つの努力をするべきです。
- 付加価値を付けて1円でも高く売る
- 取引先を開拓し1円でも安く仕入れる
売値や原価は会社が決めるものだと考える営業もいます。
ですが営業だからこそ、付加価値を付けることもできますし、取引先を開拓することもできます。
利益を確保するために、営業は考えられることを全てやることが大切です。