ブランクのあるママ薬剤師が復職を目指すときや、薬剤師が転職を考えたとき。頭の片隅にでも入れておいてほしいのが「かかりつけ薬剤師・薬局」の制度。
2016年に厚生労働省が打ち出した「かかりつけ薬剤師・薬局」の制度は、今後の薬局の生き残りに直結するほどのインパクトがあるものでした。
逆に言うと、かかりつけ薬剤師として仕事が出来れば、薬剤師としてのやりがいを得ることが出来るかもしれないのです。薬剤師として復職や転職を考えているのなら、調剤薬局に転職し、かかりつけ薬剤師を目指してみてはいかがでしょうか。
かかりつけ薬剤師・薬局とは
かかりつけ薬剤師・薬局とは、薬に対して日常的に相談が出来たり、適切な服役指導をしてくれたりする、身近な薬剤師・薬局のこと。
患者と薬剤師の間で緩やかな契約が交わされる必要がありますが、かかりつけ薬剤師になると「服薬情報の一元的・継続的把握」「24時間対応・在宅対応」「医療機関との連携」を行う必要があります。
つまり、患者と薬剤師が1対1で関係を結び、患者の薬に関する情報を全て手に入れることが出来るのです。
患者にとっても余分な薬を飲む必要が無くなりますし、薬剤師・薬局にとっても固定客を確保できるという意味で非常にメリットのある制度です。
顧客第一主義で薬剤師・薬局が選ばれる
いま、対応の良さで薬剤師や薬局を選んでいる方はほとんどいないと思います。なぜなら、処方箋を受け取る場合、病院の近くにある門前薬局で受け取ることがほとんど。薬局を選ぶ理由は「近いから」と言う距離しかなかったのです。
でも、かかりつけ薬剤師・薬局の制度が浸透していけば、将来は顧客第一主義の薬剤師がいる薬局が選ばれるようになります。その理由はかかりつけ薬剤師になると患者の服薬情報を全て管理出来て、しかも継続的に把握することが出来るからです。
その上、24時間対応してもらえ、医療機関とも連携をとってもらえるとなれば、「近さ」だけで薬局を選ぶことは無くなるでしょう。より身近で親身になってくれる薬剤師が選ばれるのは容易に想像が出来ます。
重要になるコミュニケーション能力
門前薬局が乱立したことで、薬剤師対患者と言う対人業務はほとんどなくなりました。あるとしても、受付と薬を受け取るときだけ。どんな症状に悩み、処方箋以外でどんな薬を飲んでいるのか、と言った会話が交わされることはほとんどありません。
本来であれば、患者からの情報収集(飲み合わせの確認や重複投与など)を行ってから調剤に移るべきですが、いつの間には薬剤師=調剤と言う観念が出来上がってしまったのです。
これを覆し、本来の薬剤師としての業務、つまり患者とコミュニケーションをとってから調剤業務を行うのが「かかりつけ薬剤師」の役目。必然的にコミュニケーション能力が重要になってきます。
薬の話だけではなく、健康面からプライベートまで、患者からいかに信頼されるかが大切。接客業としての薬剤師が求められているとも言えます。
処方箋を「持ってきてください」と言える強み
かかりつけ薬剤師の強みは、患者の服薬情報を一元管理出来ることと、継続して把握することです。
つまり、今までは病院の門前で受け取っていた処方箋を、「私がかかりつけ薬剤師ですから、全て私のところに持ってきてください」と言えるようになるのです。これは、薬局の売上を考えた時に、とてつもなく大きなメリットだと言えるでしょう。なにしろ、指名で処方箋を持ってきてもらえるのですから、その数は飛躍的に増えるはずです。
患者にもメリットが大きい
メリットがあるのは薬剤師や薬局だけではありません。患者にとっても服薬情報を一元管理してもらうことで、飲まなくていい薬を教えてもらうことも出来ます。総合的に見れば医療費節約することが出来るのです。また、24時間対応してもらうことで、いつでも薬の相談が出来ますよね。
患者にとっても、かかりつけ薬剤師がいるという安心感を持つことが出来るのです。
薬剤師としてのやりがい
今までは調剤だけを行っていた薬剤師でも、患者にかかりつけ薬剤師として選ばれることで、患者のために頑張ろうと思う方も増えてくるでしょう。また、患者が処方箋を持ってきてくれることで、薬局の売上にも自分の力で貢献することが出来ます。
患者と親密な関係を築いていけば、他の患者も紹介してもらえるかもしれません。その地域の方と仲良くなれば、仕事で地域に貢献していると感じる瞬間もあるはずです。
それらすべてが薬剤師としてのやりがいに繋がるはずです。
かかりつけ薬剤師になるには
かかりつけ薬剤師になるには、厚生労働省が定めた次の3つの条件を満たす必要があります。
- 薬剤師として3年以上の勤務経験があり、週に32時間以上の勤務、およびその薬局に半年以上勤務していること
- 認定薬剤師の認定を取得していること
- 医療に関わる地域活動の取り組みに参加していること
③は地域の医療イベントへの参加や、学校での医薬品に関する講演などが該当するそうです。
かかりつけ薬剤師になるのは大変ですが、目指す価値はあると思います。
最後に
かかりつけ薬剤師・薬局は、人手が足りない、24時間対応が不安と言った声ももちろんあります。ですが、薬を1か所で管理するという制度は薬局にも患者にもメリットが大きいのです。
事実「大手薬局チェーンの生き残りのキーワード」と言われるほど、処方箋を「持ってきてください」と言える、かかりつけ薬剤師の力は強いと考えられています。
将来のキャリアを考えてみても、復職や転職を機に薬局でかかりつけ薬剤師を目指す価値はあるはずです。