会社に入社すると一度は聞いたことがある「とりあえず3年」という言葉。
なぜ3年なのか、疑問に思ったことはありませんか?
この記事では「とりあえず3年」の根拠を紹介します。
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3年を一区切りにすることわざが多い
とりあえず3年勤めろと言われる根拠として、よく聞くことわざが「石の上にも3年」です。
冷たい石の上でも長い間座り続けていれば温まってくる。
辛抱強く我慢して取り組めば必ず成功する、というたとえです。
ほかにも3年を使うことわざは色々あります。
・茨の中にも三年
どんなに苦しくてもじっと辛抱していれば、そのうち状勢が変化し、いつかは必ず報われるということ
・商い三年
商売での利益を上げるまでには3年かかる、3年は辛抱せよということ
・桃栗三年柿八年
何事も成し遂げるまでには相応の年月が必要だというたとえ
「3年」を使うことわざは意外と多く、ほとんどが「辛抱すれば成功できる」というたとえになっています。
だから昔の人は「仕事も辛抱すれば成功できる」と考え、新人に対して「とりあえず3年」と伝える方が多かったと考えられます。
なので「とりあえず3年」の本来の意味は、「もう少し辛抱して頑張ってみよう」です。
ただ人から人へと伝わっていくうちに「とりあえず3年」が「もう少し辛抱して頑張ってみよう」という意味ではなく、「3年間は勤めろ」という時間を表す意味になっていったようです。
教育にかかるコストを回収するのに3年かかる
入社したら3年勤めろと言われる理由は、コストにあります。
なぜなら新卒が3年以内で辞めると会社が赤字になるからです。
具体的に説明します。
大卒者1人に必要な年間のコスト
社員1人にかかるお金は、給料の1.5倍から2倍だと言われています。
そして厚生労働省の調査によると、大学卒業者の初任給の平均額は20万3,400円です。
参考:厚生労働省「平成28年度 賃金構造基本統計調査」
つまり203,400円×12か月=2,440,800円×1.5倍=3,661,200円が1年間でかかるコストになります。
利益を出すために必要な売上高
正直なところ利益を出すために必要な売上高を計算することは、利益率や経費の比率は、会社や業界によって違うため難しい部分があります。
ですがある程度数字を掴むために、売上高人件費比率の平均値を使ってざっくりと計算します。
売上高人件費比率とは、売上高に占める人件費の割合のことで、次の計算式を使って計算します。
売上高人件費率(%)=人件費÷売上高×100
つまり「人件費÷売上高人件費率÷100=売上高」になります。
売上高人件費率の平均はおおよそ14%なので、計算式はこうなります。
3,661,200円÷14÷100=26,151,428円
年収3,661,200円の新入社員が、給与額と利益を±0にするには、1年間で26,151,428円の売上が必要です。
参考:財務総合制作研究所「売上高人件費比率」
コストの回収に3年かかる理由
一般的に新卒者の1年目は、先輩について仕事を教わる研修期間になります。
そのため個人で売上をあげられる方は、それほど多くはありません。
つまり会社としては、新入社員を教育する年間のコスト約360万円分が赤字になります。
2年目からは1人で仕事をすることも増えてきますが、まだまだ半人前
2年間の赤字を解消するには約5,200万円の売り上げが必要ですが、そこまで売れる人は少ないでしょう。
そして3年目でやっと1人前となり、7,200万円以上の売上を達成して初めて会社に貢献したことになります。
なので「会社を赤字にしないために3年は勤めろ」と言われています。
1人前になるまでの期間
マルコム・グラドウェル氏が「天才! 成功する人々の法則」の中で提唱している「1万時間の法則」というものがあります。
成功を収めたスポーツ選手や起業家たちが、ひとつのことに1万時間もの時間を投資している、という法則です。
この法則に当てはめて考えると、1日10時間仕事だけに打ち込めば、3年で1万時間を超えます。
…と言っても休みなしですが…。
ちなみに勤務時間で考えると、1日8時間×1カ月22日=176時間。
176時間×12か月=2112時間なので、1万時間を達成するには5年かかる計算になります。
とはいえ3年働くと1人前というのは多くの人の頭の中にある数字。
ひとつのことを経験やスキルとして見るのに「3年」がひとつの指標になっているんですよね。
なので仕事で1人前になるために、「とりあえず3年」という方がいます。
3年がひとつの区切りになっている
幼いころからの経験で、3年がひとつの区切りになっています。
例えば幼稚園や保育園も3年が区切りになっていますよね。
小学校も1年から3年は低学年、4年から6年は高学年と、3年がひとつの区切りになっています。
中学校や高校は3年間通学すれば卒業になります。
長い間3年をひとつの区切りとして生活してきたため、3年がひとつの区切りになっていると考えられます。
だから今までの経験を踏まえて、「とりあえず3年」という方もいるでしょう。
最後に
とりあえず3年と言われる根拠を紹介しました。
はっきり言って「とりあえず3年」に具体的な根拠はありません。
本人にやる気がなければ、3年どころか10年勤めても1人前になれません。
長い期間辛抱しても、成長するために努力をしなければ成功することもありません。
ですが「3年」がひとつの区切りになっていることは確かです。
「とりあえず3年」に意味はないと考えるか、それとも「とりあえず3年」必死に努力してみるか。
結局決めるのは自分次第だということです。