政府が「モデル就業規則」の改正を行ったことで、2018年は「副業元年」と呼ばれました。
そして「副業解禁」の流れに沿うように、多くの大企業が副業・兼業を認めるようになったのです。
ところが…。
中小企業に限って言えば、約7割がいまだに「副業・兼業を禁止」しています。
しかも副業・兼業を認めない理由は、「長時間労働を助長するため」だと言っているのです。
「長時間労働を助長するから副業・兼業は認めない」なんて、よく言いますよね。
今まで36協定を逆手にとってさんざん長時間労働をさせてきたくせに、何が「長時間労働を助長する」ですか。
と、言いたくことが沢山あるので、なぜ中小企業ほど副業を禁止するのかについて書いていきます。
理由1.管理できる人材がいない
中小企業ほど副業・兼業を禁止する理由で、もっとも当てはまると考えられるのは、管理できる人材の不足です。
つまり法律や労務管理について知識のある人材がいない、あるいは人手不足で手が回らないのです。
だからこそ、いろいろと手続きが面倒くさそうな副業・兼業を頭から禁止にしています。
そのほうが管理は楽ですし、余計なことに人手を取られなくて済みますから。
実際にぼくがブログを禁止された時も、「税金などの処理が複雑になる」ことも禁止の理由だと言っていました。
ですがブログの収入は雑所得になるため、住民税の支払いで普通徴収を選択すれば、会社で事務処理が発生することはありません。
結局はきちんとした知識を持っている人がいないため、「なんとなく面倒だから」という理由で禁止にしているだけです。
おそらく多くの中小企業が「人材の不足」を理由に、副業・兼業を禁止しているはずです。
理由2.辞められると困る
次に考えられる副業・兼業禁止の理由は、退職されると新たに人材を雇えないから、です。
中小企業は仕事の分担がはっきりしていないことが多く、どうしても一人当たりの仕事が多岐にわたってしまいます。
そのため残業や休日出勤が自然と多くなり、どうしても忙しくなってしまう。
忙しければそれなりに稼げそうですが、なぜか給与も安い。
つまり副業で大きく稼げてしまうと、従業員が辞める確率が高くなるのです。
従業員が辞めてしまうと、次の従業員を採用しないといけませんが、仕事が忙しく給与が安い職場に人は集まりません。
だからこそ副業・兼業を禁止し、できるだけ本業に縛り付けておきたいと思っているのです。
理由3.本業以外で稼ぐな!と思っている
ぼくはブログで稼ぐこと(副業)を禁止されたとき、会社からこう言われました。
「ブログを書くのは個人の自由、でも広告でお金を稼ぐのはNG」だと。
ですが「ブログを書くのは個人の自由」なら、広告収入あるなしにかかわらず、書いている時間(労働時間)は変わりません。
違いはブログに広告が貼ってあるかどうか、だけです。
つまり会社は「仕事以外で稼がれるのが嫌」だから、ブログで稼ぐことを禁止してきたのです。
結局「本業以外で稼ぐな!」と言いたいだけ。
「それが嫌なら退職してもらうしかない」とまで言い切るのですから、どれだけ本業に縛り付けたいのか、と、思ってしまいます。
理由4.本業以外で稼がれると管理できなくなる
もう一つ考えられる副業・兼業禁止の理由が、従業員の管理が難しくなることです。
つまり稼ぎを本業だけにすることで、仕事を辞め辛くしている、と考えられます。
わかりやすく言えば、人材の囲い込みをしているのです。
実際に副業で20万円も、30万円も稼げるようになると、「収入源が2つある余裕」が生まれます。
さらに今の仕事を辞めても生活に困ることはない、という安心感が得られるのです。
この安心感が生まれると、「嫌な仕事は断れる」ようになりますし、「必要のない残業も断れる」ようになります。
最悪首になったとしても生活には困りませんから、理不尽な要求などを断る強さが手に入るのです。
ですが従業員が「嫌な仕事を断る強さ」を手に入れると、会社にとって厄介なものでしかありません。
今まで理不尽な指示でも聞いていた従業員が、突然常識の範囲でしか働かなくなってしまうからです。
とくにブラックな傾向のある企業ほど、従業員に副業で稼がれると困ることでしょう。
従業員を思うように管理するには、本業以外で稼がれると困るのです。
「長時間労働を助長する」は売り言葉に買い言葉
副業・兼業を禁止している多くの企業が、「長時間労働を助長するから副業・兼業を禁止している」というのは、体裁を整えるためのウソでしかありません。
考えてもみてください。
今まで数多くの企業が36協定を逆手にとって、どれだけ多くの人に長時間労働をさせてきたのか。
それなのに「長時間労働を助長するから副業・兼業は禁止」とか、自分のことを棚に上げているとしか思えませんよね。
なぜ多くの企業が「長時間労働を助長するから副業・兼業を禁止している」というのか。
その理由は「働き方改革」で長時間労働が問題になったことが原因で、「長時間労働はだめだと言いながら、副業・兼業を解禁して長時間老僧させる気か!」と、噛みついているだけだと考えられます。
いや、それ以外に理由が思いあたらない。
結局労働者のことなど一切考えず、自分たちの都合を押し付けて言い争っているだけにしか、見えないんですよね。
副業による情報漏洩のリスクは詭弁に過ぎない
ちなみに「情報漏洩のリスク」を副業禁止の理由に挙げている企業も多くみられますが、はっきり言って的外れな考え方です。
そもそも勤め先の営業機密を外に漏らすかどうかは、社会人として最低限のモラルを守るかどうかの話ですよね。
それに情報漏洩を心配するのなら、「副業禁止」ではなく「副業を許可制」にしたほうが、リスクを軽減することができます。
なぜなら隠れて副業をされると、どこで何をしているのかが全く把握できないからです。
もしかすると隠れてライバル企業で副業を行っているかもしれません。
そんなリスクを抱えるよりも、禁止事項(利益相反行為など)や罰則を明確にした上で、副業を許可制にしたほうがよほど建設的です。
なぜ中小企業ほど副業を禁止するのか
中小企業ほど副業・兼業を禁止する理由を一言でいえば、「自分の会社を守るため」「従業員が辞めないようにするため」です。
なぜなら副業・兼業でしっかり稼がれてしまうと、「今の会社にいる理由」が無くなってしまい、辞めてしまう可能性が高いから。
従業員が辞めてしまうと、新しい従業員を雇うのが大変になります。
従業員の数が減ってしまうと、最悪の場合会社を維持できなくなります。
ですが「会社を守るために副業は禁止!」と、大きな声で発表するのは恥ずかしいですよね。
だからこそ、「自分の会社を守るため」に、「長時間労働」や「情報漏洩」などを理由にして、副業・兼業を禁止しているのです。