私が小規模保育園で働いていた時にやってしまった失敗談です。
この保育園は規模が小さいということもあり、玄関を締める鍵が二つしかありません。
しかも二つある鍵のうち一つは園長先生が持ち歩いているので、職員が管理出来る鍵は一つしかありませんでした。
その為、鍵を閉めた次の日は早番で出勤し、決められた場所に鍵を置いていくという方法で、一つしかない鍵をみんなで協力して管理をしていました。
もし鍵をなくしたり渡し忘れてしまったら、みんなに迷惑が掛かってしまいます。
なので私が管理するときは、絶対になくならないようにと、持ち運びができるキーケースにしっかりと鍵を付けていました。
私が鍵を管理し、早番で出勤したある日のこと。
終業時間が過ぎたときに他の先生から、「今日って早番だったでしょ? もう大丈夫だから先に上がっていいよ。」と言っていただきました。
なので、私はお言葉に甘え、キーケースから保育園の鍵を外して定位置に置いて帰りました。
「せっかく早く帰ることができたし、買い物をしていこう。」
そう思った私は、保育園の製作で使う物や保育雑誌を買うために、大型ショッピングセンターに寄ることにしたのです。
仕事が終わった解放感。
久しぶりの買い物。
もう楽しくて仕方がなくて、夢中になってお店の中を見て回りました。
心行くまでショッピングを楽しみ、お店から出るとあたりは真っ暗。
満足した私は、幸せいっぱいな気持ちで自宅に帰ったのです。
ところが…。
玄関の鍵を開けようと、鍵を鍵穴に差し込もうとするのですが何故か入りません。
不思議に思った私は、鍵をスマホの灯りで照らしてみようと考え、カバンからスマホを取り出しました。
そしてスマホの画面を開いてみると、なんと保育園から数分おきに、何十回も電話がかかってきていたのです。
たまたまこの日はスマホをバイブにしてあり、しかも買い物に夢中だったため、着信があったことに全く気が付きませんでした。
とはいえ数分おきに何十回も電話をかけてくるなんて普通じゃありません。
「きっと何か問題が起こったに違いない」
そう思い、慌てて保育園に電話を掛けました。
すぐに遅番の先生が電話に出てくれて、いったい何があったのかと尋ねると、遅番の先生は少し言いにくそうにこう言いました。
「急にごめんね。実はさ、今日帰る時に鍵置いていったでしょ? その鍵、保育園の玄関の鍵穴に入らないんだけど……もしかしてこの鍵、あなたのお家の鍵とかだったりしない?」
…そうです。
あろうことか私は、保育園の鍵と家の鍵を間違えていたのです。
遅番の先生に「鍵が違っている」と言われた私は、頭が真っ白に…。
慌てて先生に謝りながら
「今から保育園に届きに行きます!」
と言うと、遅番の先生は、
「今から保育園に来るの大変でしょ? 私も途中まで取りに行くよ。ちょうどコンビニが途中にあったよね? そこで待っててね。」
と言ってくれました。
私は「そんなご迷惑をお掛けするわけにはいかない」と言ったのですが、結局コンビニで落ち合い鍵を交換することに…。
コンビニで遅番の先生に会ったときは、とにかく申し訳なくて何度も何度も謝りました。
「大丈夫だから気にしないで」
そう優しい言葉を掛けてくれましたが、迷惑をかけた自分が許せなかったのです。
なぜなら最初に保育園から電話が掛かってきたのは、私がスマホを見る一時間前。
つまり遅番の先生は、仕事が終わってから一時間以上保育園で待たされていたことになります。
しかもその先生は幼いお子さんがいらっしゃる方なので、「お子さんもお家でお母さんの帰りを待っていたんだろうな」と思うと、本当に申し訳気持ちでいっぱいになりました。
その後、保育園では鍵に関する失敗(持って帰ってしまったり、定位置に置いたはずか見当たらなくなったり)が続出。
結局園長先生に「鍵を増やしてほしい」とお願いし、もう一つ鍵を作ってもらいました。