20歳の頃、ドラッグストアでアルバイトを始めました。
それまでは人前に出ることのない、裏方のような仕事が多かったのですが、当時は内向的な自分の性格を変えたくて思い切って挑戦する事にしたのです。
店長は初老の男性で少し気難しい印象を受けました。
私が販売業未経験である事を知った時に微妙な顔をされたのが気になりましたが、無事に採用され翌日から働く事になりました。
初めての勤務では、少しだけ陳列の手伝いをした後、いよいよレジのお手伝いとなりましたが、初めは先輩に横について貰う形でスタートしました。
先輩と言っても私より年下の女の子です。
ポイントカード有無の確認、商品やおつりの渡し方等こと細かく丁寧にアドバイスしてもらいました。
レジは人が作業する姿を見ると凄く簡単そうに見えますが、実際に自分がやってみると非常に難しく感じられます。
しかも私は初めてということもあり1つ1つの動作が遅く、あっという間に私のレジには人が大量に並ぶ事になりました。
待たせてしまって申し訳ないと必死の形相で頑張っていますが、お客さんには通用しません。
明らかに不満を漏らす方もおり、私は焦る一方です。
横についてくれている先輩も「このままではいけない」と思ったのか、急きょ私と場所を入れ替わり、結局先輩が主、私がサブの役割でレジを担当する事になりました。
もちろん先輩は1人でもこなす事が出来るので、完全に私は邪魔な存在です。
少しレジが落ち着いた所で他の方と交代し、私は再び陳列作業へ戻されました。
先輩が店長に呼び出されて話をしている様子でしたが、おそらく私の仕事状況について報告されていたのだと思います。
先輩からは「レジも少しずつ慣れていけばいいですよ」と声をかけられましたが、それから私はレジを担当する事はありませんでした。
あまりの手際の悪さに店長が適応外と判断したのかもしれません。
私としては自分を変えるきっかけになると思ってバイトに応募しただけに、少し残念な結果になりました。
それでも陳列の作業は自分に合っていて、それなりに楽しく仕事をしていました。
積極的に「いらっしゃいませ」とお客さんに声をかけられるようになり、やっとドラッグストアのバイト自体に慣れてきた頃、人生最大の失敗を犯しました。
それは詰め替え用の洗剤の段ボールをカッターナイフで開けようとしていた時の事です。
店長が私に教える時、中身の商品に傷がつかないようにカッターを使って下さいと注意されていたと思います。
確かに私もわかっていたはずですが、仕事に夢中になっていて、注意されたことをすっかり忘れてしまったのです。
そして段ボールから取り出した洗剤を商品に陳列していた時、お客さんから「床が濡れているよ」と指摘されました。
よく見ると洗剤2袋がカッターによって破れていて、そこから大量に洗剤が漏れ出していたのです。
周辺はあっという間に洗剤の強い香りが漂い、異変に気付いた店長が走ってきました。
店長はまずお客さんに「申し訳ありません」と謝罪し、私に「手が汚れているから洗っておいで」と言いました。
手を洗って元の場所に戻ると、今度は「今日はもう帰っていいよ。また電話する。」と言って自宅に帰されました。
その後、店長から電話がかかってくる事もありませんでした。
使い物にならないと判断されたのです。
この情けない経験がトラウマとなり、その後は接客業を選ぶ事も無くなりました。