ピアノの演奏会で最後の最後に音を外してしまった

ピアノの演奏会、最後に音を外してしまった

私は20代の女性で、4年間程ピアノの講師の仕事をしていました。

ピアノ講師といっても、子供たちにピアノの演奏を教えるだけではなく、歌の指導や軽いダンスなどを教える機会も多く、対象年齢は3歳から高校生まで幅広い年代の子供たちと接しています。

私が務めていた音楽教室では、1年を通して様々なイベントを開催しており、発表会やアンサンブル大会、店内コンクールなど定期的に行われるイベントに向け、毎日忙しい日々を過ごしていました。

数あるイベントの中でも最も大変なのが発表会で、生徒全員の曲をマスターするほか、発表会の演奏順を決めたり、演奏に必要なデータを作ったりと講師みんな大忙しです。

 

発表会では、講師演奏と呼ばれるデモンストレーションのようなものがあり、生徒の前で講師たちがピアノやエレクトーンの演奏を行います。

子供たちやその保護者に披露する曲なので、難易度は比較的高く、講師たちもそれなりに練習が必要で、レッスンの空き時間や会議終了後に数回集まって練習を重ねました。

発表会会場を掛け持ちしている講師は会場ごとに違った曲を演奏することになっており、私も発表会に向けて2曲の講師演奏曲を練習することになりました。

今回の講師演奏では、1曲はピアノとエレクトーンによるデュオで、もう1曲はエレクトーン3台によるアンサンブルに決定し、デュオの方では私はピアノを担当し、ベテランの講師がエレクトーンを担当することに決まりました。

 

本番までに空き時間を見つけては先輩講師と練習を重ね、発表会でより質の高い演奏をしたいという思いから、音質にもかなりこだわりを持って練習し、いよいよ発表会当日を迎えました。

先に行われたエレクトーン3台の講師演奏がある発表会は大きなミスもなく上手くいき、ほっとしたのもつかの間、1ヶ月後には別の発表会を迎え、ピアノとエレクトーンによる講師演奏を迎えました。

こちらの発表会に関わる講師は4人だったため、2名ずつペアを組んで講師演奏を行います。

私が行うピアノとエレクトーンのデュオによる講師演奏は、発表会の前半と後半の間で、発表会の前半を締めくくる大切な場面でした。

 

私は元々緊張しやすく、人前で演奏することは苦手な方でした。

講師になってから大分緊張が減ったものの、生徒や生徒の保護者に見られているという緊張感は凄まじく、ピアノの前に腰かけた時点で手が震えていました。

その後、エレクトーンの合図で講師演奏がスタートし、緊張しながらも良い雰囲気で弾いていましたが、いつしか緊張がなくなり曲に入り込んでいました。

あまりに曲に入り込みすぎたせいか、どこを弾いているのかふと我に返るとわからなくなり、頭の中がパニックになりました。

しかし、演奏を止めることはできないので、とにかく必死で喰らいつきます。

そして最後の最後、ラストの一番盛り上がるところまで来たところで…。

 

バーン!

 

と、楽譜にない低音を響かせてしったのです。

「やってしまった!」

と、思うと同時に頭の中はさらにパニック状態に。

 

今までやってきたことが水の泡になる。

一緒に演奏した方に申し訳ない。

保護者の皆さんもがっかりするかも…。

 

ほんの一瞬の出来事でしたが、いろいろな思いが頭の中を駆け巡ります。

それこそ、この世の終わりではないかと思うほど、焦ってしまったのです。

 

幸い、全体を通してみるとほかに大きなミスなく、子供たちにも保護者にも好評でした。

しかし、発表会に向けて沢山練習したことを思い出すと、失敗したことが悔しく、一緒に演奏したベテランの講師にも申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

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