私は大手文具メーカーに勤務する27歳の男性会社員です。
新入社員の頃から営業部に所属し、書店の文具売場を中心に自社の商品を売り込んでいます。
今回は、私が入社3年目のときにやらかしてしまった大失敗を紹介します。
文具メーカーに就職した当初から、私は新宿駅の近くにある大型書店をお得意先とし、良好な関係を築いていました。
そして今から2年前、その大型書店で開催される文具フェアの営業チーフを私が担当することになったのです。
順調に打ち合わせを重ねていたつもりでいましたが、トラブルはフェア開催前日に起きました。
文具フェア用に納品した商品のひとつである油性マジックにクレームがついたのです。
先方からは「500個の3色セットを発注したのに、バラ売り用の1500本が届いた」と言われました。
納期はその日の17時です。
クレームが入ったときは、すでに16時を過ぎていました。
私にとっては寝耳に水のクレームで、思わず「セットとはお聞きしていません」と答えました。
しかし、そんな回答では先方が納得するはずもなく…。
「今になってそんなことを言われても困る! どうしてくれるんですか!フェアは明日から始まるんですよ!」と、逆に怒りの炎に油を注ぐことになってしまったのです。
あわてて受注票を確認してみると、蛍光ペンやボールペンは「バラ売り用」となっていましたが、油性マジックについては「3色セット」と書かれていました。
どこでどうなって、何を勘違いしてこうなってしまったのか…。
しかしあのときは、そんなことを検証している暇はありませんでした。
私はすぐに課長に報告して、工場から同じケースに入った3色の油性マジックを早急にかき集めるように指示を出してもらいました。
しかし、あいにく工場には500セットもの在庫はありませんでした。
そこで、営業部員総出でそれぞれの担当先に連絡してもらい、「余った油性マジックのセットがあれば回してほしい」と、お願いすることになったのです。
営業部は「ケースだけでも残っていませんか?」と問い合わせる人、何個か確保してすぐに会社を飛び出していく人など、上司も部下も巻き込んでの大騒ぎとなりました。
結局、かき集めた3色セットは約200個に達し、足りないぶんは私と他数名が残業をして、バラ売り用の油性マジックをケースに詰め込んでセットにすることで、何とか不足分約300個をフォローすることができました。
こうして翌日の文具フェアには、何とか間に合わせることができたのです。
先方は「とにもかくにも、開店には間に合ったんだから…」と、言ってくれました。
ですが契約は契約です。
前日の17時が納期となっていた以上、先方から納期に間に合わなかった契約違反として5万円のペナルティを請求されました。
会社としては、支払わざるをえなかったことは、言うまでもありません。
このトラブルを受けて、すぐに営業会議が開かれました。
トラブルをおかした張本人の私は、身の置き所もありません。
会議の冒頭は、「今回は私のミスで大変な騒動を引き起こしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」と、私の謝罪の言葉から始まりました。
すると部長は、「いや、今回は君だけの責任じゃない。これは営業部全体の問題だと思う。2度とこんなことが起こらないように、今後はみんなで気をつけようじゃないか」と、言ってくれたのです。
部長の言葉に営業部の人たちは笑顔で頷いて賛同し、会議室は温かな拍手につつまれました。
あの大失敗以来、私は受注票の内容を「これでもか!」というくらい確認しています。
この大失敗を受けて、意思疎通ができているお得意先だからといって、思い込みで仕事をしてしまったことを私は深く反省しました。
それと同時に、自分が所属する営業部のチームワークの素晴らしさに、改めて感心させられました。