自惚れと慢心から不正に手を染めた結果。信頼を失い左遷される羽目に。

自惚れと慢心から不正に手を染めた結果。信頼を失い左遷される羽目に。

私は卸売会社の物流管理部門で働いていました。

私の仕事は飲食店向けの業務用食材の注文やお客様への配達など、食材の手配と運搬が主となります。

 

大きな失敗をしてしまった当時、私は勤務していた会社が業務拡大をしたことに伴い、新規開拓の営業を中心に行っていました。

特に大人数を相手にする居酒屋やファミレスなどに、売れ筋商品を積極的に売込むよう指示されていたこともあり、張り切って仕事に臨んでいたのです。

とくに年末年始には、大口注文を確保する目標もあったことから、担当地域にある飲食店を一日中巡り歩くことも多々ありました。

クリスマスや忘年会向けの期間限定商品をいくつも紹介し、大口の注文を取ることに成功したこともたくさんあったのです。

 

仕事がうまくいっていると、自分は何でもできる気持ちになってきます。

そんな半分浮かれた気持ちが芽生えたときに、とても大きな失敗をしてしまったのです。

 

そもそものきっかけは、他の社員が注文数を間違えたこと。

その社員は、居酒屋の注文で忘年会用の格安食材を注文しましたが、発注数を間違えてしまい、本来の注文数よりも多い数で手配してしまったのです。

発注ミスの原因は、メモ書きの文字が汚かったこと。

その字の汚さは3が9に見えるほどでした。

しかも忘年会用の格安食材は、期間限定の安売り商品だったことからキャンセルができません。

なので、余った商品はほかの営業で分担して、何とか売りさばく必要があったのです。

 

発注ミスで入荷した格安食材の量は、トラック数台分になるほどの数。

ですが需要が多い年末年始なら、営業所の全員でフォローすればすぐに捌けると、営業全員が楽観視していました。

そして、誰が過剰在庫を売り捌くか話し合いをする中で、売り上げが好調だった私はつい、「一番数が多い商品は私一人でも売り切れる!」と豪語してしまったのです。

 

この時は調子に乗っていたとしか言いようがありません。

売れる根拠は何もなかったのですが、自分なら余裕で売ることができると思い込んでいたのです。

 

実際に売り始めると、任された量の三分の一は、すぐに売ることができました。

 

しかし、その後はどこの飲食店にかけあっても全く売れません。

「数が足りている」「店の営業方針に合わない」などの理由で断られてしまったのです。

 

そうこうしているうちに、食材の賞味期限が近づいてきます。

焦った私は担当外の地域まで売り込みをかけてみましたが、それでも売れません。

売れないどころか、ほかの営業所から「縄張りを荒らすな!」と名指して非難されてしまったのです。

 

気が付くと売れずに在庫を抱えているのは私だけになっていました。

「誰かに手伝ってもらいたい」と思ったこともありますが、売り切れると言ったのは私自身です。

人に頼るのはプライドが許しません。

 

困り果てた私は、ついに卸売業の世界ではタブーとされている、同業他社への横流しを行ってしまいます。

 

横流しがタブーとされているのは、賞味期限間近の商品が多いこと、商品の温度管理に不具合が起きやすいことが理由です。

もし、横流しを行ったことがバレれば、社会的な信用を大きく損なう恐れもありました。

 

ですが、自分で「売り切れます!」と言い切った在庫を残したままで、年は越せないと焦っていた私は、不正な方法とわかっていても横流しを決行してしまったのです。

 

当時の私は、商品を1つでも多く売ることしか頭になく、売れるのであれば方法は関係ないと考えていました。

自分で「売れる」と言い切った手前、何としても売り切らなくてはいけないと、追い詰められていたのです。

 

実際に業者との交渉はとんとん拍子で進みました。

あっという間に在庫を半分まで減らすことができたのです。

 

ところが…。

賞味期限が近かった商品は傷みが生じていたため、業者から「取引はキャンセルする」と言われてしまったのです。

 

業者から返品された商品は傷みが出ていますから当然売ることもできず、ただ倉庫を占領する邪魔な不良在庫となってしまいました。

そして自らのプライドが邪魔をして上司にも一切相談しなかった私は、業務に大きな支障をきたしたと厳しく叱られることになります。

さらにお叱りを受けるだけではなく、本社の倉庫勤務に左遷されてしまったのです。

 

私の失敗は大量の商品をひとりで売ることができると根拠も無く思い込んだことと、業界のルールを破って不正な方法で帳尻を合わせようとした点です。

誰にも相談しなかったこと。

不正な方法で帳尻を合わせようとしたことが原因で、私の信用も地に落ちました。

もし当時の私が少しだけ、「自分の限界」を考える力があれば…。

もし、少しだけ困ったときに相談する勇気があれば…。

信頼を失い左遷されるという結果には、ならなかったかもしれません。

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