私は地域の分別ごみの最終処分を行う施設で働いています。
そこでは担当する地域から出される様々なごみを分別し、材質ごとに最適な方法で処分を行っています。
私は主に金属系のごみの分別に関する作業全般を担当していました。
私が仕事上で大きな失敗をしてしまったのはごみ処理施設で働いてから数年ほど経った頃です。
その頃の私は新入社員が行う手作業での分別を卒業し、機械操作によるごみの加工処分の作業に従事していました。
機械操作は本来なら、専門の教育を受けたうえで資格を取るための試験を受ける必要がありましたが、資格所持者が監督していれば未経験者でも、機械を扱っても良いとされていたのです。
また、実務経験があれば試験に有利と言われたこともあり、私自身が作業に乗り気だったことは否定できません。
資格を取ればできる仕事の幅が広がり、遂には現場全体の監督を任されることがあるので張り切っていたのです。
ですがあまりに張り切るあまり、程よい緊張感ではなく焦りにも似た気持ちが生まれ、後の大きな失敗に至ったのでした。
その時の私は機械操作にも慣れ、一度に処理するごみの量を少しずつ増やしていました。
機械で処理できるごみの量には限りがありましたが、説明書通りの限度量を守っていると時間が足りないので、機械を動かしながらごみを追加していたのです。
本来ならやってはいけない危険な行為でしたが、時間の短縮を図るために作業員の多くがごみの追加投入を行っていました。
私も最初は説明書を守ってごみ処理を行っていましたが、操作に慣れると説明書を守るのは時間の無駄と感じるようになりました。
そのため、他の人が無事なら自分も無事だろうと楽観的に考え、機械を動かしている時にごみを追加投入する危険な行為を繰り返すようになったのです。
自分はもう機械の扱いには慣れたので、ごみ処理の量を増やしても問題は無いと勝手に解釈しました。
ここで教育係の先輩や現場を監督する上司に相談していれば失敗は避けられたかもしれません。
しかしその時の私はせっかく良い経験を積むチャンスだからと、誰にも相談せずにごみの量を一気に増やしたのです。
当初は次々とごみが機械の内部に飲み込まれる様を見て、これで自分もベテランの仲間入りだと無邪気に喜んでいました。
自分の技術力が大きく向上したと浮かれてもいましたが、実際にはそのようなことはまったく無かったのです。
処理するごみの量を増やすのは機械への負担が大きくなることを意味します。
しかもその時の私は早く実績を積んで出世したいと思っていたため、本来なら事前に分別する必要があった金属製品も、塊のままで処分するようになったのです。
そのため、様々な不純物が混ざっている粗悪な金属の塊ができてしまいました。
私の失敗は本来なら分別するはずだった金属製品をそのままの状態で処理したことです。
ごみの分別を行うのは再利用の際に不純物となる異物を除去し、純度の高い再生資源を作るのが目的です。
その作業において私は手抜きを行い、結果として質が悪く商品価値が低い、不純物だらけの固まりを作ってしまいました。
私の手抜きは再生資源を買い取る業者からのクレームで発覚し、当時の上司からは厳しく叱責されてしまいました。
直ちにごみ処理作業の業務から外されると共に、現場の主任と一緒に資源の買取り業者を訪ねて謝罪を行うことを命じられたのです。
その後も業務に支障をもたらした罰として、一定期間の減給処分とごみ処理作業への従事の禁止を命じられました。
この失敗によって仕事への意識が大きく変わりました。
仕事に慣れたとはいえ自分が担当する作業で手抜きをしてしまい、それがきっかけになって勤め先や取引先に多大な迷惑をかけてしまった事実は否定できません。
例え手間がかかる作業でも決して手抜きをしてはいけないということを、自分自身の失敗から学びました。