
会社にセールス電話がかかってきた。
「不動産投資をやっている会社です。一度お会いしたいのですが、夕方なら時間ありますか?」
社名と名前を早口で名乗るなり、いきなりこの質問だ。
面白いもので、「時間がありますか?」と質問されると「あります」か「ありません」で答えてしまいそうになる。
おそらく「あります」と答えると待ち合わせ場所を設定されるのだろう。
「ありません」と答えると「では、いつならよろしいですか?」となる。
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断ってからが長いセールス電話
「なぜですか?」
質問には質問で返してみる。
「老後、手元に100万円あればうれしくないですか?」
また質問が飛んでくる。
ここまでの会話で巧妙なのが、「勧誘を一切していない」ことだろう。
実際何の電話なのか良く解らない。
不動産投資をやっている会社、老後に100万円と言ったことから勧誘の電話だろうと推察はできる。
黙っていると次から次へと質問が飛んでくる。
仕事中だったので「不動産投資の話でしたら結構です。」と告げる。
すると相手は「誰が投資の話だって言いました?」
確かに一言も言ってはいいない。
私「投資の話でしょう?興味が無いので結構です。」
相手「ちょっと待ってください、誰も投資の話とは言っていません。私がいつそんなことを言ったのか説明してください。」
私「しつこいな、そういったものは必要ないと言っている。」
相手「そういったものって何ですか?何か勘違いされていませんか?」
私「もう結構です。切りますよ。」
相手「待ってください、私もそういったものと言われて傷ついています。私が何を話したのかきちんと説明してください。」
私「あなた一番最初に不動産投資って言ったじゃないですか。忘れたんですか?」
相手「・・・・・。どうしたんですか?続けてください。聞いていますので。」
こんな調子だ。最後には話をするのが嫌になって電話を切った。
相手の言葉尻を抑え、傷ついていると言うことで相手に罪悪感を持たせ、交渉を有利に進めようという気持ちが垣間見える。
「私はそんなことを言っていない。なぜ言ってもいないことで私を責めるのか。とても傷ついている。悪いと思うのなら一度会って話を聞いてくれ。」
こんなところだろう。
もしも傷ついていると言われたからと話を聞き、謝ったが最後逃れられなくなる。
相手の言葉尻をとっている限り、こちらが負けるまで永遠と話が続く。
勧誘の電話であれば、「結構です。もうかけてこないでください」と言い、切ってしまうのが一番良い。
断った相手に同じ勧誘の電話をすれば法に触れるため、二度とかかってくることはない、はずだ。
言葉尻をとらえて話を有利な方向へ持っていく
電話が終わった後、後味の悪い気持ちを抱えながら、相手を少しづつ追い詰めていく話術に関心した。
まるで相手の心理を把握しているような。そんな風に思えた。
もちろん電話応答用専門のマニュアルがあるとは思うが。
業者が使った言葉尻をとらえる方法を考えるうちに、色々と使い道があることに気が付いた。
社交辞令で「今度機会があったら飲みに行きましょうか。」と言われることは多いだろう。
多くの人は「そうですね。是非。」
そんなあいまいな返事で終わらせていると思う。
だが、この軽い言葉をとらえてこういってみたらどうだろうか?
「そうですね。来週以降の予定はあいていますが、いつにしましょうか?」と。
相手も「一緒に行きましょう」と言った手前、社交辞令ですとは言えなくなる。
相手が意中の人であれば、見事に約束を取り付けることが出来る。
これも相手の言葉尻を取った交渉の方法だろう。
言行一致の法則
言行一致の法則と呼ばれるものがある。
「人は自分か言った言葉と自分の行動を一致させたい」と言う心理が働いている。
これが言行一致の法則だ。
先ほどの話では、「今度飲みに行きましょう」と言ってしまったために、「いつにしましょうか」と返され、断れなくなっている。
商品を販売するときにも使える方法だ。
「気に入った商品はございますか?」
こんな問いかけで、商品を一つに絞り込む。
「この商品がご自宅にあれば良いなと思いませんか?」
勘の良い人はこの時点で気付き、断り始めるがすでに遅い。
「気に入ったと言ったでしょ?」「嘘だったんですか?」と追い詰められる。
次に出る断りは「お金がない」だろうか。
「分割で買えますよ。」とその断りも掻き消されてしまう。
もちろんすべての人に使える方法ではない。
意思の強い方には通用しないだろう。
だが多くの人が、「人から良く思われたい」と思っている。
「人は自分か言った言葉と自分の行動を一致させたい」と思うのも、人から良く思われたいからだ。
言行一致の法則を使った交渉、理屈は簡単だ。
小さなYESをなるべく多く引き出せばいい。
引き出したYESが多いほど、最後にNOとは言えなくなる。
まとめ
言葉尻をとる方法は、揚げ足を取る事に近い。
当然相手はうろたえるし、怒り出すこともある。
一度口から出た言葉は取り消すことが出来ない。それだけに厄介だ。
言行一致の法則も同じことで、「吐いた唾は呑めぬ」なのである。
思いっきり下手に出て、「解りました。考えておきましょう」のような言葉を引き出す。
もちろん本気で考える気が無くても構わない。
いや、本気で考える気が無い時ほど、言葉尻を取って自分の思う方向へコントロールしたくなる。
しばらくしたら電話をかけ、「例の件どうなりましたか?」と確認をする。
当然相手は考える気が無いので、当たり障りのない回答をするだろう。それを何度か繰り返し突然。
「あなたの考えておくという言葉はそんなに軽い物だったんですか?あなたの言葉を聞いて私は安心していたんですよ?もう取引の段取りを組んでいるんです。どう責任を取るおつもりですか!」
そう一気に追い込めば、相手も困惑し思わず謝ってしまうだろう。
お詫びの言葉が出たら「謝るということは何とかしていただけるんですね?」とさらに追い込む。
こんな例え話のように、使い方を間違えると敵を作りかねない。
使い方はよく考えて欲しいと思う。