
さて今回は、個別受注生産の工程管理について、です。
個別受注生産は、注文ごとに形や仕様の違う商品を作る生産の形のこと。
お客様「こういう商品を作ってね」
工場「わかりました!」
ってな感じで、お客さんごとに作る商品が変わるんです。
ちなみに、お菓子や洋服などの量産品は、見込み生産で作られることがほとんど。
見込み生産は、販売数をよくして先に作っておく生産形態のことです。
ちなみに私は、現役の生産管理兼購買です。
つまり、工場の生産に関する「キモ」を管理しているわけです。
こういうと聞こえがいいかもしれませんが、実情は最悪。
もともとの工程管理が適当だったため、うまく生産を回すことができずにいます。
というか、完全に行き詰まっています。
何しろ前任の工程管理者は、「適当にしか工程を組んでいない」と断言する方でした。
また、ほかの社員の話を聞いても、工程を管理しようとした人は1人もいなかったそうです。
つまり、管理方法が確立されていない!
そしてその結果、めちゃくちゃなことになっているわけです。
個別受注生産の工程管理で私の仕事が行き詰まる理由
個別受注生産の工程管理で、私の仕事が行き詰まる理由は1つだけ。
ズバリ!
ものつくりを知らない人が多すぎるから、です。
ものつくりの会社で仕事をしているのに、ものつくりを知らない。
これって、結構致命的だと思いませんか?
仕様は作る前に決めないとダメ
作る商品の仕様は、作る前に決めて当たり前。
ですが…、これができない営業が意外と多かったりもします。
ひどいと、納品直前になって仕様変更が入ることも。
こうなると工程管理どころじゃないんですよね。
すでに終わった工程も、もう一度戻してやらないといけなくなる。
結果、無駄な作業がメチャクチャ増えることになります。
仕様は作る前に決めないとダメ。
作りながら考えるとかも、ダメなんです。
標準リードタイムは納期じゃない
受注生産で一番厄介なのが、標準リードタイム=納期にされてしまっていること。
つまり、標準リードタイムが60日なら、発注から60日後に商品が納品される。
そう考えているお客さんや営業がメチャクチャ多いんです。
でもね。
標準リードタイムは「標準」でしかないんです。
標準って目安ですよ。
この商品なら大体60日が目安だけど、状況によって変わってくるよ。
っていうのが標準リードタイムです。
工場が暇ならもっと早く作れることもあります。
逆に忙しければ、90日かかることもあるんです。
標準リードタイムは納期を約束するものじゃありません。
あくまでも目安。
ここを理解していない人が多いと、それこそ工程がめちゃくちゃになります。
納期回答=契約を理解していない
標準リードタイムで納期を決める人のほとんどが、納期を約束すれば契約になることを理解していません。
何か問題があれば、容易に変えられるものだと思っているんです。
これが大問題。
工場の状況を把握せず、標準リードタイムだけを頼りに納期を決めてします。
で、「この納期で受注したからあとはよろしくね!」といった感じで、工場に仕事を投げてくるんですよね。
暇ならいいんですよ。
ただ忙しい時が本当に困る。
なぜなら、希望する納期通りに作れないから。
なので、「その日は無理、この日ならできるよ」と納期を連絡すると、「その日程じゃお客さん言えない」とか言い出すわけです。
「いや、しらねーよ」ってね。
んで、すったもんだして大問題になるわけですよ。
当然、工程もめちゃくちゃになります。
納期を回答したらそれは契約と同じ。
これを理解できないなら、営業なんてやめちまえ! と思いますけどね。
そもそも「ものづくり」を理解していない
これ、最初に言いましたよね。
そもそもの原因は、ものづくりを理解していないことだって。
例えば…そうだな。
溶接ってどうやるか知っていますか?
溶接の種類とか、使う工具とか。
あるいは、鋳造ってわかりますか?
鋳造の種類とか、わかりませんよね?
これ、かかわらない人は知らなくて当然なんですよ。
でもね。
溶接でものづくりをしている会社で働いているなら、溶接を理解していないといけません。
鋳造でものづくりをしているなら、鋳造について知っていて当たり前なんです。
ものづくりを知らないとすべてがズレる
これ、当たり前の話なんです。
ものづくりを知らない人に、営業とか工程管理とか検査とかはできないんですよ。
何しろ、その商品がどうやって作られているのか、理解していないんですから。
できるわけがない。
でも現実は、ものづくりを知らない人が営業をやっています。
だから工程がめちゃくちゃになるんです。
知らないものを知っているような顔で売るわけですから。
工場を経験しないと営業になれない会社もある
余談ですが、工場の経験者じゃないと営業になれない会社もあります。
理由は簡単。
工場で実際に商品を作らないと、商品知識が身につかないからです。
この会社では、新入社員は全員工場に配属されます。
そして、一通り工場を経験してから、営業とか購買とかになっていくわけです。
なので、従業員がとにかく商品について詳しい。
作り方や必要な材料、生産日程などを熟知しているんです。
これはまぁ極端な例かもしれません。
ですが、本来はこうあるべきだとも思うわけです。
個別受注生産は、生産前の打ち合わせが肝
個別受注生産でもっとも大切なのは、生産前の打ち合わせです。
仕様だけじゃなくて、コストとか納期とかをしっかり打ち合わせることが大切。
もちろん営業とお客さんだけで話をしてはいけません。
営業は工場の状況を常に確認しないとダメ出し、必要なら設計を打ち合わせに参加させる必要もあります。
ここで手を抜くと、後々の工程が大変なことになってしまうんです。
いくつか工場で働いてきましたが、生産前の打ち合わせがきちんとできていれば、たいていスムーズに仕事が進みます。
逆に問題ばかり起こるのは、事前の打ち合わせがないからなんです。
個別受注生産は生産前の打ち合わせが肝。
ここだけは、手を抜いちゃいけません。
まとめ
ということでまとめです。
個別受注生産の工程管理で私の仕事が行き詰まる理由。
それは、モノづくりを知らない人が相談もなしで、勝手に仕事をとってくるスタイルが確立されているからです。
だから、適当な納期がガチガチに固まっている仕事が次から次へと流れてきて、結果として工程管理ができなくなります。
で、その改善策は事前打ち合わせをきちんとすることです。
事前に打ち合わせをすれば、ほとんどの問題が解決できます。
え?
そこまで分かっていてなんでやらないのかって?
この理由も簡単なんです。
変化を良しとしない人がほとんどだから。
一度会議で提案したらこう言われました。
「工場にやさしい受注の仕方をするのか」と。
どうやら工数の範囲内で生産するのは、工場が手を抜いていると思うみたいですね。
そんな考えの人が多いので、なかなか変わらないわけです。
ということで今回は以上!
あ、そうそう。
工場の管理についてもっと知りたい人は、ちょっと古いけど「ザ・ゴール」という本がおすすめです。
物語になっているので読みやすいし、ボトルネックとかの考え方もわかるしで、面白いですよ。