慢心と傲慢さが招いた大失敗。足を踏み外し屋根から転落、そして…。

慢心と傲慢さが招いた大失敗

私が仕事で大失敗したのは、板金会社で勤めていた時のことです。

このように書くとたいていの人は、車の塗装で失敗したのだろうと考えるでしょう。

しかし私が勤めていたのは建築の方です。

雨樋やトタン屋根などを貼りに行く仕事で、とんでもない失敗をしてしまいました。

それは私が二十歳になったばかりのころでした。

高校を卒業してすぐに板金会社に就職したのですが、まったく知らない業界だったので最初は失敗ばかりです。

しかも板金とは言っても車ではなく建築の方で、「親方」や「職人」といった呼び名が当たり前に使われているくらい昔気質の職場です。

そのため手取り足取り教えてもらえるはずはなく、先輩がやっていることを見て覚えなければいけません。

ただ私が恵まれていたのは、仕事では恐ろしい職人さんたちですが、それ以外ではとても優しく、一番下っ端の私は特に可愛がってもらえました。

厳しくも優しい先輩たちの指導のおかげで、自分で言うのはおかしいですが、日に日に腕を上げていったのです。

中途採用で入社して来た人などは、入社して数年経っているのにまだ他の人に見てもらわないと仕事ができません。

それに対して私は僅か二年で、雨樋くらいなら一人で現場に行き、仕上げてくることができました。

そうなると周りの職人さんは、中途採用の人よりも若く仕事覚えが早い私をますます可愛がってくれるようになります。

この時の私は、人よりも仕事ができると信じて疑いませんでした。

早い話、調子に乗っていたというわけです。

そしてその日は突然やって来ました。

と、あるお宅の倉庫にトタン屋根を貼りに行くことになったのです。

トタン屋根とは波型になった板のことで、屋根や場合によっては壁に使われることがある素材です。

軽くて扱いやすく作業が比較的簡単なので、私は大好きな仕事でした。

ただし難点なのは簡単な作業のため、かなりの確率で例の中途採用の人とコンビを組まされてしまうことです。

中途採用の人は良く言えば仕事が丁寧ではあるものの、悪く言えばとにかく仕事が遅いです。

それだけでなく慎重な性格のせいで、いちいちこちらに「これで良いか」や「手本を見せて欲しい」などと言う始末です。

社長から一緒に行ってくれと言われた瞬間、ため息をつかずにはいられませんでした。

案の定、中途採用の人は始まる前から入念に仕事の内容を私に確認します。

中でも踏んではいけない箇所、できれば触れない方が良い部分などはしつこいくらいに質問してきます。

内心では「いい加減にしてくれよ」と、うんざりした気持ちだったのですが、今にして思えば中途採用の人が正しかったです。

理由は大した高さではないとは言え、屋根に上がるのは危険を伴う行為です。

それなのに自分は仕事ができる、ヘマはしないとタカをくくっていたため、安全管理を疎かにしていました。

それと同時に、仕事ができない人と組まされている自分は不幸だとさえ思っていたのです。

相変わらずゆっくり仕事をする中途採用の人に苛立ち、私が「遅いんでやります」と一歩踏み出した時、床がメリッと音を立てて凹みました。

あっと思った瞬間にはもう遅く、私は二階建てほどの高さから真っ逆さまに転落してしまったのです。

さらに運が悪いことに、建設途中のその倉庫の一階部分には鉄柱が立っていて、私の太ももはそれに貫かれてしまったのです。

痛みはもちろんありました。

ですが、それ以上にショックのほうが大きく、動くこともできずにただ震えているだけでした。

すると中途採用の人が素早く駆けつけくれて、止血し救急車を呼んでくれました。

私は散々馬鹿にしていた人に、命を救われたのです。

何事も慣れて来た時が一番危険で、常々緊張感を持って仕事をしなければいけないと学びました。

そして同時に傲慢さが招いた失敗だと猛烈に反省し、勝手に「この人は自分の下」だとランク付けしていた自分の愚かさには後悔しかありません。




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