「できて当たり前」が原因で、大きな失敗を巻き起こすことに

「できて当たり前」が原因で、大きな失敗を巻き起こすことに

私は食品輸入会社で包装資材の担当として、食品を入れるポリ袋と段ボール箱のデザインを考え、海外の取引先に印刷と梱包を指示する仕事を行っていました。

また出来上がった袋や段ボール箱の印刷状態のチェックも行います。

文字、図柄、色、袋の厚さ、段ボールの厚さなどの確認を行い、私がOKを出さないと梱包に使うことができません。

初めてF国の製造者から輸入することになった時も、私が袋のデザインを考えて取引先の担当者に印刷の指示を出しました。

そして袋にデザインが印刷されると、いつものように確認用のメールが届きます。

F国の工場から送られてきた写真は2枚あり、1枚は袋の表面、2枚目は袋の裏面でした。

写真を見て印刷ミスがないかをしっかりチェックします。

相手国の担当者は日本語がわからないので、誤字脱字はよくあるミスです。

平仮名やカタカナがまるで暗号のような、奇妙な形になっていることもあります。

袋に印刷されているバーコードもきちんとチェックしないといけません。

バーコードには商品情報だけではなく、国などの情報も盛り込まれています。

もしバーコードが間違っていると在庫管理ができなくなるため、とても大きな問題になってしまうのです。

さらに食品表示のチェックも必須です。

食品は、法律で表示項目が決まっているため、ミスがないかよく見なければなりません。

当社の指定デザインでは、食品表示が袋の裏側にくるので、特に裏側のチェックは慎重に行いました。

そしてミスがないことを確認したら、メールで「OK、急いで袋詰め作業を済ませて船積みしてほしい」と返事をしました。

袋のチェックを済ませた後の生産も順調に進んでいき、いよいよその商品が輸入される瞬間が訪れます。

輸入した商品を検品するのは営業担当の仕事です。

私は事前にチェックを行っているので、もう終わった仕事のような気分になって安心していました。

ところが…。

夕方遅くかかってきた検品結果を知らせる電話で、

「袋の裏と表の上下が逆だ!こんな袋は初めて見た。ちゃんとチェックしたのか!」

と、営業担当者が怒り狂っているのです。

正直私は、営業担当者が何を言っているのかわかりませんでした。

袋のデザインは、表も裏もきちんと写真でチェックしています。

間違いなど起こるはずがないのです。

「何かの間違いだろう」と思いながら、営業担当者が持ち帰ってきた現物を見ると、確かに袋の表と裏で上下逆に印刷されています。

メールで送られてきた写真では、袋の上下がわかりません。

しかも私は、「袋の上下は同じにすること」という指示を出していません。

そのうえメールでチェックを行ったときに、「OK」という返事を出してしまっています。

上下が逆に印刷された袋を見ながら、顔面の血が引き、ひざがガクガクと震えるのを感じました。

仮に袋の印刷を日本でやり直し、袋詰めも日本で行ったとすると、200万円以上かかってしまいます。

しかもすべてをやり直すには、1か月以上の時間が必要なのです。

つまり、会社に200万円の損害を与えた上に、納期に1か月以上遅れることになります。

「注文がキャンセルされるかもしれない、下手をすると取引停止になるかも…。」

そう考えたら怖くて仕方がなくなり、ひざが震えだしてしまったのです。

幸いなことに、取引先は納期を1か月待ってくれると言ってくれました。

営業部長が頭をさげまくってくれたおかげです。

そして再印刷や袋詰めのやり直しの費用も、F国の製造元が負担してくれることになりました。

先方が日本の袋の常識を知らなかったこちらが悪いと認めてくれたからです。

実は相手側が素直に非を認めてくれることは、とても珍しいことなのです。

なにしろ私は上下を合わせる指示を出していませんし、完成した袋の写真を見て「OK」だと返答しているのですから…。

本来なら「OKをもらっているのだから、そちらが悪い」と言われても仕方がないことでした。

この一件があってから、包装資材の指示書に「表面と裏面の上下は同じにすること」という項目を増やしました。

自分の中では当たり前だと思っていることでも、住む場所や環境が変われば、当たり前ではなくなることがたくさんあります。

ある意味「できて当たり前」ということは、1つもないのかもしれません。

私はこの失敗を通じて、必要なことをすべて伝えることの大切さを学びました。

そして、「当たり前だ」と思い込むのではなく、「ミスは必ずあると考えて、確認することが大切だ」ということを痛感しました。

この時に事態の収拾に動いてくれた営業部長にはいくらお礼を言っても足りないと思っています。

私も人が窮地に立ったときには、面倒がらずに真剣にサポートしようと思っています。




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